マデンス
「近年の流行りもあってさ、ぼくは最近まで言語化はできるようになるべきって思う派だったんだよ」
パシン
「だった、ってことは今は」
マデンス
「や、今も言語化はできるに越したことはないと思っているんだよ。メジャーなコミュニケーションツールとして機能しているわけだからさ。たださ、言語化ブームの最初の頃から、言語化することで取りこぼされる感情もあるとか、すべてを言語化すべきでないって主張する人もいたじゃん」
パシン
「いたね」
マデンス
「あれがよくわからなかったんだよ。頭の中にあるものをそのまま言葉に変換すればいいじゃんって」
マデンス
「アーティストもさ、自分の内側にあるものを曲や絵にしたりするじゃん。どれも同じ、感情を別の形に変換する作業だと思ってたんだけど、そうじゃなかったんだよ」
パシン
「どゆこと?」
マデンス
「こないだ画像編集をしてたときにさ、PSD(編集データ)で書き出そうとしてたデータをうっかり間違えてPNG(画像データ)で出力しちゃって、おまけに編集中のデータも保存せずに閉じちゃったことがあってさ」
パシン
「うわ〜それは辛い!」
マデンス
「うわめんどくせ〜って思いながらまた作業し直したんだけどさ。その時脳裏に、言語化することで取りこぼされる感情がある、ってセリフがよぎったんだよ」
パシン
「ほう……あ〜〜!そういうことか…!」
マデンス
「わかる?あの時ようやく肌で感じたんだよ。言語化を拒む人の心理が」
パシン
「出力しちゃったら見えなくなる部分あるね〜…!思考や感情の言語化を拒む人にとってのそれって、感情の変換を望まない形で強要されてたってこと…?!」
マデンス
「だいぶ雑なぼくの考察でそう決めつけるのはせっかちだからそうはしないんだけど、そうだったりするのかなぁって」
パシン
「確かにワタシも、長ったらしい文章より絵で示せよ!って言える世の中なら言ってたかもしれない…!人によっては言葉や絵じゃなくて曲で話せよって思ってる人もいるだろうしなぁ〜。ホラ、手ェ叩いて口笛吹けよ!簡単だろ?って思ってるかもしれない」
マデンス
「ハハハ」
パシン
「今の話で思ったことがあってさ」
マデンス
「うん」
パシン
「ワタシって考えたくなくても頭が働きすぎて考えるのが止まらないタイプで、それを上手く言語化できない方だからよく困るんだけど、似たような感じで、本当は言語以外の手段で出力したいのに言語化がやめられないって人もいたりするのかな」
マデンス
「あ〜、まぁ…いる……だろうね。世の中、そんなヤツいないだろってヤツはだいたいいるもんね」
パシン
「ワタシみたいに考えが止まらない人のために、考えないようにするコツが書かれた本やサイトはいっぱいあるけれど、あえて言語化をしないコツを紹介するものって、そういうのに比べたら全然ないはずだから、困る人は困ってるんだろうなぁって思った」
パシン
「すごいな、少数派にも満たなそうな、いるかも怪しい層に想いを馳せている」
パシン
「やっぱさ〜言語から脱却するノウハウは確立すべきなんだよ。手とか胸とか叩いてさ、ウホウホ言ったりするコミュニケーションなんかいいんじゃない?」
マデンス
「ゴリラのコミュニケーション逆行しているw」
パシン
「コンガとかも鳴らしちゃってさ」
マデンス
「人類をドンキーコングにでもするのかw でもそれがメジャーなコミュニケーションツールとして普及したら、今度は、なんでもかんでもウホウホすればいいってもんじゃないって主張し出すゴリラが出そうじゃない?」
パシン
「確かに…!そしたら今度はウホウホからウキーに変えればいい!サルになるよ!」
マデンス
「さよなら人類…」