マデンス
「なんでそっち行くの、神社はこっちだよ？」

パシン
「今日はコッチから行ってみない？」

マデンス
「行けんの？ そっちから？」

パシン
「地図アプリ見たら行けるっぽいんだよ」

マデンス
「どれどれ……え、なにこの細い青い線？ 道？ 川じゃないの？」

パシン
「ストリートビューで見てみたらほっそい道だったよ」

マデンス
「ほんとだ…車が通れないとこうなるのか」

パシン
「知らんけどね…！」

マデンス
「……こっちの方って高級住宅街だったんだ。でっかい家ばっかだ。近くにこんな所があるとは」

パシン
「デカい門の前にデカい車……なんかここら辺の家、やけに窓がキレイな気がしない？」

マデンス
「おー…言われてみればそうかも？」

パシン
「マデンスはこういう家が似合うね」

マデンス
「そう？ だろう？」

パシン
「否定しないんかい」

マデンス
「参拝の手順、直前に確認しておいて間違えてんのほんと笑うんだけど」

パシン
「緊張したんだよ！ ど緊張！ だからお祈りする前に"手順間違えてすいません！"って脳内で前置きしてから、"無病息災で楽しく仕事できますように"って、慎ましく最低限のお祈りにしたからね」

マデンス
「(笑)」

パシン
「そのおかげかおみくじは大吉だったよ」

マデンス
「哀れんでんだよ、神様がパシンを(笑) さて、買い物して帰る？」

パシン
「せっかくこっちまで来たからなぁ…もうちょっと歩きたい！ 調べてみたらこっちに公園がいっぱいあるみたいなんだよ。」

マデンス
「言うと思った。いいよ、公園めぐりしようか」

マデンス
「いいね、この時間の公園。小学生の頃、放課後に友達とこういう公園に集まってゲームしたのを思い出す。パシンの世代はなんのゲームやってた？」

パシン
「こ〜〜…こ…こ……こ〜〜うえんで飲む自販機の飲み物ってなんかいいよね！ マデンスも喉渇かない？ ワタシ自販機でコーヒー買ってこようかな！ マデンスも何かいる？」

マデンス
「お？ 話そらしたな？ じゃぁココア」

パシン
「アグちゃんはワタシと一緒のコーヒーでいい？」

アグリンブス
「ぴぃ！」

マデンス
「おまえコーヒー飲めんの？！」

マデンス
「神社の近くは金持ちの家ばっかだったのに、ちょっと歩いただけで古い民家しかなくなったな」

パシン
「すりガラスのレトロな窓……いい…ワタシはこういうデザインの家の方が居心地がいいね」

マデンス
「あーあ、じゃあ将来は別居だね」

パシン
「ﾋｬ────ｯ‼︎」

マデンス
「ショック受けすぎだろ」

パシン
「じゃなくて！！ マデンス後ろ！！ この家、ドアにガッツリに穴が空いてる…！」

マデンス
「うわマジじゃん。空き家？」

パシン
「うわわわ、上の方の窓、ガラス無くなって真っ黒…！」

マデンス
「だいぶ前に火事で全焼した家がそのまま放置されてるって感じか…作画資料に写真撮ってく？」

パシン
「いやいや、さすがにこういうのはやめようよ…人が死んでるかもしれないし…もし撮った写真の黒い部分に人の顔みたいなのが写ってたらヤだよ」

マデンス
「それもそうか」

パシン
「ねぇ、この先、地図には何も書いてないけど道がある…」

マデンス
「どこに繋がってんの？」

パシン
「わかんない。なんかすっごいワクワクしてきた」

マデンス
「やめとけやめとけ、クマでも出たらどうすんだよ」

パシン
「あっ、でも奥の方に看板がある！ ちょっとなんて書いてあるかだけ見てくる！」

マデンス
「なんて書いてあった？」

パシン
「視力悪くて全然読めなかった。おまけに奥は暗そうで怖いから行くのやめた」

マデンス
「あほじゃないの？」

パシン
「やっぱ行ったことない場所の散歩は、気になる道がいっぱいあるなぁ……あの道の先とかちょっと見てみたいけど…寄り道してたら暗くなっちゃったな…」

マデンス
「冬は暗くなるの早いもんね。行く？」

パシン
「いや、今日はもういいや。道の脇は林だし。暗い場所で木がいっぱい生えてるとなんか怖くない？」

マデンス
「それぼくが夏に言ったやつなんだけど？！ …ってか雨降ってきてない？」

パシン
「マジで？！ じゃあもう早く帰ろう」

マデンス
「買い物は？」

パシン
「あんこが余っちゃってるから餅を買おうかと思ったんだけど…また今度でいいや」

パシン
「……あ」

マデンス
「どうしたの？」

パシン
「そういえば、去年のお守りまだあったんだった。どうしよう…」

マデンス
「開運おみくじのやつか。お焚き上げに持ってく？ 去年のはなんだったの？」

パシン
「大黒天」

マデンス
「今年は？」

パシン
「今年も大黒天」

マデンス
「2年連続？」

パシン
「そう。せっかく同じのが続いたから、何年連続で同じのが出るか、試してみたい気もする…」

マデンス
「大黒天いっぱいにすんの？ ……欲深いなぁ…」

パシン
「……やっぱりお焚き上げに持ってこう。おみくじにも"慎ましくあれ"って書いてあったし」

マデンス
「それがいい」