パシン
「ねぇ、この間の道、また通ろうよ」
マデンス
「いいよ、今日はまだ明るいし」
パシン
「やっぱり明るいと全然怖くないね」
マデンス
「青空と緑のコントラストが綺麗だ」
パシン
「なんか塔がある。なんだろ、アレ?」
マデンス
「さぁ? 行ってみる?」
パシン
「うん!」
パシン
「でぇーーっかい」
マデンス
「ググってみた。給水塔だって」
パシン
「水の施設だったかぁ」
マデンス
「最近、この辺りをよく散歩してるよね。ぼくもこの景色好き」
パシン
「緑が多くて整備された歩行スペースもあって散歩にピッタリだよね」
マデンス
「ここ気に入った。いつかここに住みたい」
パシン
「気に入った、って……ここ高級住宅街だよ?」
マデンス
「そうなの? どうりで街並みも綺麗なわけだ」
マデンス
「給水塔がまだ見える」
パシン
「この先にこの前行かなかった安いスーパーがあるんだけど、その向かい側は高級スーパーなんだよ」
マデンス
「高級住宅街の証がそんなところにも……? ねぇパシン、そこ行ってみようよ」
パシン
「いいよ。どんなものが売ってるか見てみようか」
マデンス
「なんか……思ってたよりセレブリティな感じしなかったな……」
パシン
「そう?」
マデンス
「ふだんよく行く駅前のスーパーとそんなに値段が変わらないような気がしたし、だいたい2、30円ぐらいじゃない? それに豆腐に至っては38円のやつもあったよ」
パシン
「確かに、思ってたほど高級感はなかったね。どういうのを期待してたの?」
マデンス
「なんかこう……全体的にぼくらの普段食べてるようなものの2、3倍ぐらい高くて……あのスーパーを検索したら、サジェストに「宗教」って出てきたから、こう……禍々しい雰囲気で、庶民のぼくらが入りづらいような雰囲気があったら面白そうだったのになって……」
パシン
「フフッ、でも客層はちょっと面白かったよ」
マデンス
「えっ、そうだっけ?」
パシン
「うん。なんか全体的に落ち着いた服装の人が多くって、お金持ち故の着飾ってない感じが漂ってたよ」
マデンス
「全然気にしてなかった……」
パシン
「それに、店内も掃除が行き届いてキレイだったし、BGMもオシャレな洋服屋さんで流れてるような洋楽だったし」
マデンス
「そっちかぁ〜〜。そういうところで高級感を出していたとは……」
パシン
「その数10円分の差で清掃業者を雇ったり、客層を選別しているんじゃないかなぁ?」
マデンス
「なるほど〜」
パシン
「知らんけど」
マデンス
「知らんのかーい」
パシン
「じゃあお次は向かいのお安いスーパーの方にも行って見比べてみようか」
マデンス
「いいねぇ、行こう行こう」
パシン
「品揃え……よかったね……」
マデンス
「めっちゃよかった……」
パシン
「なんか、どのお店もそれぞれの良さがある、のいい例だったって感じだね」
マデンス
「こっちは確かにちょっと小汚いような気がしなくもなかったけど、店が広いし品数も多かったしで、どっちも悪くなかったね」
パシン
「あ、いい景色。ちょっと写真撮るね」
マデンス
「おっけー」
パシン
「橋」
マデンス
「いいね」
パシン
「白い花」
マデンス
「デンキウソウみたい」
パシン
「階段」
マデンス
「階段好きだねぇ」
パシン
「夕方直前の空」
マデンス
「空もよく撮ってるよね」
マデンス
「ん? 何あれ?」
パシン
「ググってみた。"モニュメント 宇宙からのメッセージ"だって」
マデンス
「へぇ。パシンこういうわけわかんないの好きでしょ」
パシン
「街中にあるアートって大好き」
パシン
「ねぇ、アレとマデンスの写真撮りたいんだけど、いいかな?」
マデンス
「ぼくの? いいけど」
パシン
「ありがとう。じゃあそこに立って」
マデンス
「こう?」
パシン
「いいねぇ、かわいい」
マデンス
「そりゃどうも。パシンも撮ろうか」
パシン
「いやぁ……ワタシはいいかな……写真に撮られるのあんまり好きじゃないんだもん」
マデンス
「そう。残念だなぁ〜〜」
マデンス
「じゃあさ、写真に撮られるのと、ぼくのお願いを聞くのとだったら、どっちがいい?」
パシン
「マデンスのお願いかなぁ」
マデンス
「そうかそうか。ようし、じゃあ……」
マデンス
「わーい寿司だ、やったね」
パシン
「ここでもポテトって……マデンスって味覚がホント……」
マデンス
「なに?」
パシン
「いや? かわいいなぁって」
マデンス
「ふーん?」
パシン
「人の食べてる姿っていいよね」
マデンス
「まあわかる」
パシン
「実は最近、偏食家の食事風景に目覚めちゃってさ……」
マデンス
「え? どういうこと?」
パシン
「ほら、たやたやとかパシココさんとかが、脂質とか糖質の多いスイーツばっかり食べてるのを見ると……なんか、イイなって」
マデンス
「……それ、ぼく意外には言わない方がいいと思うよ。相当キモいよ」
パシン
「わ、わかってるよ……」
マデンス
「別に落ち込ませようとしたつもりはないよ。ぼくであれば何を言ってもいいんだからさ」
パシン
「マデンス……じゃああとでマデンスの人に聞かれたくない話も聞きたい」
マデンス
「なんでそうなるんだよ……いいよ」
パシン
「やったぁ〜」